秘密と偶然の名
リアルの出来事を中心に、自作小説等を載せています。
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Fateアンソロジー小説3
 郊外の森に踏み入ろうとする人間は少ない。入れば最後、広大な天然の迷路を抜けなくてはならなくなる。
 森の中は昼間でも暗く不気味で、普通の人なら入ろうとすら思わない場所なのだ。
 士郎達が向っているのは、その森の奥深くに聳え立つ、巨大な城。何も知らない人がそこを訪れてしまったのならば、城にたどり着いた達成感などより、真っ先に見知らぬモノに対しての恐怖感を感じるだろう。
「ふう、やっぱり遠いな」
 もう直ぐ城が見えてきそうな場所までたどり着いた士郎は、一息つきながら独り言を漏らしていた。
「疲れたのですかシロウ。ならば少し休みましょうか?」
 横には、武装姿のセイバーが居る。
 何故セイバーが武装姿かと言うと「ここでは何が起こるか分かりません、万全の体制で臨むべきです」だそうなのである。
「大丈夫だよ。ここに来るのも結構慣れたしさ」
 心配させるのも気が引けるので、そうさせないように再び歩き始める。
 セイバーも、士郎の足取りがしっかりしているのを見て、安心した様だ。
「見えてきたぞ、セイバー。もう少しだ」
 目を凝らすと、木々の間からアインツベルン城が覗いている。本来なら完全に隠れて見えないのだが、士郎は目に魔力を込めることで視力を強化できる。その為見つけることが出来るのだ。
 そこから二人は、無言で歩を進め、アインツベルン城の入り口までたどり着いた。
 セイバーは苦い思い出がある為か、やや警戒している。しかし周りにはバーサーカーの姿なども見当たらない。
 門を開けて、中へ入る。すると、二人のメイドが現れた。
「セラ、リズ。イリヤはいるかな?」
 そう呼ばれた通り、メイドはいつもの二人だ。
「お嬢様は只今お留守にしております」
 対応したのはセラだ。相変わらず堅苦しい口調で、士郎をねめつける様に睨んでいる。
「うん、イリヤ、目を放した隙に、士郎の家に行った」
 セラに続き、リズが説明をする。セラは「余計な事を言わなくても良いのです!」と文句を言っているが、当のリズは無反応だ。
「どうやら入れ違いになってしまったようですね。シロウ、どうしますか?」
「いや、問題ないかな。イリヤに訊くより、管理している二人の方が詳しいだろ」
 訊きに来たのは食糧に関してなのだ。アインツベルン城の食糧等を管理するのも、この二人のメイドだろう。
 イリヤが理由を知っていたとしても、このような問題に関しては、メイドからの情報で知る確率の方が高い。
 士郎はセラとリズに事情を説明し、何か知らないかと尋ねた。
「食糧の件ですか。それならば此方にも被害は出ております」
 アインツベルン城の食糧は、士郎たちの様に商店街から買い物に出かけて購入しているものではなく、ランサーの言っていた通りに直輸入らしい。
 その為、商店街などとは別ルートで搬送されているのだとか。しかしそれでも何かのトラブルに見舞われて搬送されなかったらしい。
「今は蓄えあるから良いけど、あんまり長くもたない」
 リズは相変わらず表情が変わらないものの、セラは憎々しげな表情をしている。
「それで、二人ともそのトラブルとやらが何なのか、知っているのですか?」
 セイバーが前に出る。士郎をかばおうとしているのか、士郎の前に立つ。心なしか表情も固い。
 セラはセイバーに顔を向けると、面白くなさそうに顔を傾けた。
「もし知っていたとして、あなた方に教える理由などありません」
「は?」
 素っ頓狂な声を上げてしまった士郎。元々リズとは仲が良いとは言えないが、ここまで徹底しているとは思わなかった。
「あなた方に事情を説明したとして、私達に利益があるとは思えません」
「なんでさ。俺たちは原因究明をして、食糧を取り戻したいだけだ」
「そうです。私達は原因を突き止めて、現状を打破するためにこうして理由を探っているのです」
「この状況があなた方が仕組んだ罠であり、お嬢様。果てはアインツベルン家に恩を売っておこうという腹積もりであるかもしれません」
 友好的とはいえないセラを説得に掛るセイバーと士郎。対するセラは、頭から信用していないらしく受け入れるつもりもなさそうだ。
「呆れましたセラ、あなたは主人にとって何が有益かすらも理解できない人でしたか」
「私は何においてもお嬢様の為になることを考えております。その過程で疑いすぎるという事はありません」
「それが理解できていないというのです。イリヤスフィールがシロウに懐いているのは確かです。今更恩を売る必要も無いでしょう」
「所詮はアインツベルン家を裏切った魔術士が拾ってきた、どこの馬の骨とも分からない男です。信用できるはずがありません」
 いつの間にやら士郎は置いてきぼりを食らい、何故かセイバーとセラの口論と化していた。
 是が非でも理由を聞き出そうとするセイバー。そして取り付く島も無いセラ。
(この二人、実は似た者同士なのかもしれないな……)
 どちらも口うるさく、敵対する相手には容赦が無い。士郎とアーチャーの反りが合わないように、セイバーとセラは似ているからこそ許容できない何かがあるのだろう。
 しかしこのまま続けても、口論が平行線を辿るのは目に見えている。
 仕方が無いので、士郎は訊く対象を変えることにした。
 口論に夢中で士郎の行動に注意を向けていないセラに気づかれないよう、静かにリズに近寄り、小声で話しかける。
「なあリズ。何か理由知らないかな?」
「詳しくは知らない。でも、何者かに襲われて、明確に食料だけを盗んで行ったって聞いてる。食糧以外に、被害はないって」
「そうか。それで、何時頃に現れるとか、特定の場所とかはあるのか?」
「無い。全部違う場所、違う時間」
「分かった、有難うリズ。セイバー、もう良いよ。一旦帰ろうか」
 セイバーはセラと目線で火花を散らせている真っ最中であった。二人は士郎とリズが会話していることなど全く気づいていなかったらしい。
「どうしたのですか?まだ事情を聞いておりません」
「良いよ、リズから訊いたから」
 それを聞くと、セラは一瞬目を見開いて驚いたような顔し、また次の瞬間にはリズに詰め寄っていた。
「リーゼリット、あなたは何を考えているのです!」
「これもイリヤの為。シロウは良い人、きっと解決してくれる。それに、あんまり詳しい情報も無い」
 今度はセラとリズの口論が始った。尤も、いきり立つセラに、無表情のリズが淡々と答えているだけではあるが。
「行こうか、セイバー」
「ええ……」
 二人の口論に口を挟む必要は無いので、二人はそそくさとアインツベルン城を後にした。

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