秘密と偶然の名
リアルの出来事を中心に、自作小説等を載せています。
Fateアンソロジー小説2
 相変わらずランサーは港に居座っていた。ヒュ、と音を立てて竿を振るう。
「・・・ああ、なんだお前か。セイバーまでつれてどうかしたかよ。あいにく今日は当りが薄い、夕食の材料欲しけりゃ他あたってくれ」
 士郎とセイバーが背後から近づくも、しっかり10メートル付近で気配を察知し、前を向いたままそんなことを言ってくる。
「ちょっと用事があってな、ランサーこの前の事なんだけど・・・」
「この前?商店街に商品が届かねえって話か?」
 ようやく士郎達の方を向くランサー。しかしその顔は気怠げだ。
「ええ、そうです。このまま食糧難が続けば、いずれ私達は飢え死にしてしまうかもしれません。知っていることが有るのなら教えてはもらえないでしょうか」
 そんなランサーに事情をセイバーが説明し始めるものの、彼は呆れた顔をし始めた。
「飢え死にって、お前それでもサーヴァントか?んなもん魔力供給さえ受ければ死にゃしねーだろうよ」
「う・・・それはそうですが・・・しかし肝心の士郎が倒れてしまっては、私も現界していられません。やはり食事は必要です!」
「そんなに食いたきゃその辺で狩りでもしてろ。お前の腕なら適当なモン狩ってこれんだろ。後は適当に焼いて食え」
「な・・・!私にまたあのような雑な料理を食べろというのですか!」
 いつの間にか鎧武装に変わっているセイバー。口論しているうちに本気になってきたようだ。
このままでは港が冬木市から消えかねない。焦ってなだめかかる士郎。
「セイバー、落ち着いて。今は戦いに来たんじゃない」
「で、ですがシロウ・・・」
「なんだ、殺りあうってんなら相手になるぞ?」
 ランサーはニヤニヤと笑みを浮かべている。どう見てもセイバーをからかっているだけなのだが、真面目なセイバーは律儀にも反応してしまうのであった。
「止(や)めてくれ、港を壊す気かお前ら!」
 士郎の悲痛な叫び声が当たり一面こだまする。
「だとよセイバー。大人しくしてろや」
 この二人を見るのが楽しいのか、ランサーは一層笑みを深くする。
 セイバーは憤懣やる方ないらしく、今にも暴れだしそうなほど殺気を撒き散らしている。 
「あんまりセイバーをからかわないでやってくれ。それで、何か知らないのか?このまま食糧難だと、バイトだって辛いだろ?」
「分かったよ。だがな、その質問ならオレに聞いても無駄だぜ。原因が分かってりゃ、苦労なんざしてねぇよ」
「やっぱ知らないのか」
 結局振り出しに戻ってしまっただけのようだ。士郎は邪魔をしてすまなかったと、詫びを言い残して去ろうとするが。
「ほう、セイバーではないか。とうとう我(オレ)の伴侶になる気にでもなったか」
 唐突に金ピカの人登場。呼ばれざる客が来たお蔭で、セイバーとランサーは露骨に嫌そうな顔をしている。
「どうしたギルガメッシュ、怖気づきでもしたか?
・・・なんだ、お前達か。こんな所に何の用事だ」
 そして赤い人も登場。その姿は相変わらず、全て投影で作り出した釣り用具で固められている。
 士郎とセイバーは今まであえて関わらないようにと、ランサーのみに話しかけていた。
この二人は今まで、逆方向の場所に陣取って謎の対決を繰り広げていたのだ。下手に関わると面倒になると判断したので避けようとしていたのだった。
流石にあれだけ騒げば、気づいてもおかしくないのだが。
「私は貴方の様な相手と添い遂げるつもりはありません。
ところでアーチャー、ここ数日冬木市で起こっている異常の原因について、何か知っていることはありませんか?」
 取りあえずセイバーは、金ピカことギルガメッシュには用事がないとばかりに、隣にいるアーチャーに話を向ける。
「貴方とてシロウです。この異常にはお気づきでしょう」
 どうして俺だと異常に気がつくんだ?などと考えてしまった士郎ではあるが、面倒になりそうなので言葉を飲み込んだ。
「いや、あいにくと分からないな。そもそも私たちはサーヴァントだ、お前と違って食に対してのこだわりなどは無い。食べることばかり考えているサーヴァントというのも、珍しいものだ」
 そりゃそうだよなー。などと士郎が考えていると。

――カチン――

「って、ちょっとまてセイバーーーーー!」
 何かがひび割れる音と共に聖剣を取り出したセイバーを、飛び掛って止める士郎。
「放してくださいシロウ、ここで決着を決めねば私の沽券に関わります!」
「バカか!そんなもん振り回したらそれこそ食糧どころか冬木市自体消し飛ぶってーーーー!」
 必死にしがみつく士郎と、今にも約束された勝利の剣(エクスカリバー)を開放しかねない形相(ぎょうそう)のセイバー。
「雑種、我(オレ)のモノに勝手に触るなと何度言えば分かる。その薄汚い手を放せ」
 そして空気を読んでいるのかいないのか、相変わらず不遜な態度で士郎を見下しているギルガメッシュ。
「この状況で放せるかーーーーー!」
「ならばこの場で葬り去ってやろう」
 更に王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)まで展開される始末。
ランサーなどは我関せずといった感じで、普通に後ろで釣りをしている。
「待てギルガメッシュ、お前の相手は私であろう。まだ勝負はついていないぞ」
 アーチャーが、ギルガメッシュと士郎たちの間に割って入る。
因みにセイバーは「こうなったら令呪でも使って大人しくさせるぞ!」と士郎が叫んだ所で、やっと落ち着いてくれた。
さて、セイバーと士郎のもみ合いが終わりを告げたのもつかの間、今度は赤と金の対決が始まろうとしている。
「む、そうであったな。貴様との決着など余興に過ぎん、さっさと終わらせる事にしようではないか」
「ほう、随分な自信だな。では今までの対決記録はどう説明するつもりなのか、答えてもらおう」
 互いにニヤニヤと笑みを浮かべながら、目線で火花を散らすアーチャーのクラス二人。
「ゆくぞ!」
「望む所だ!」
 再び展開される王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)。ギルガメッシュはそこへ手を入れ、得物を掴む。
 アーチャーは手から細長い骨子を出現させ、実体化されたソレを掴む。
「今日こそお前の鼻を明かしてやろう。新調したこのリールの力、とくと見るが良い!」
「ふ、何を言うか。そのような投影の贋作で我(オレ)の竿に勝てるとでも思っているのか。所詮は偽物、本物に勝てる道理などないわ!」
 そうして二人は平和にも、釣竿を握って釣り糸をたれ始めたのであった。
「・・・驚きました。あの二人が、こんな平和的な対決方法を選ぶとは。一体どんな心境の変化があったのでしょうか」
 今まで暴れていたのも忘れ、セイバーはそんな二人を心底不思議そうに眺めている。
「さ、さあ・・・きっと海は童心に帰してくれるんだろう。あの二人、色々荒んでそうだしさ・・・・」
 すまないセイバー、むしろ俺のほうが聞きたい。などと思う士郎であった。
「しかし、これからどうしましょうか」
「そうだなー・・・・ランサーもアーチャーも知らないとなると、他に知ってそうな人か・・・・」
 うーん、と考え込む二人。
「アインツベルンの嬢ちゃんなら、何か知ってるんじゃないのか?」
 今まで我関せずだったランサーが、再び口を開いた。
「イリヤが?なんでさ」
「あの嬢ちゃんのこった、食糧は直輸入くらいしてるだろ。その過程で何のトラブルがあったのかくらい、把握しててもおかしくはないんじゃねーのか?」
 釣り針に餌をつけながら、ランサーはアドバイスを贈る。餌を付け終えると、再びヒュッと音を立てて竿を振るう。
「なるほど、確かに有りうる話です。さっそく話を聞きに参りましょうシロウ」
「ああ、そうだな。有難うランサー、助かるよ」
「いいからさっさと行け。ただでさえ変なが2匹も居座ってるんだ、これ以上煩くされると釣れる魚も釣れなくなる」
 後ろでは未だ謎の対決が繰り広げられている港を眺め、こうして二人は郊外の森へ向ったのであった。

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