秘密と偶然の名
リアルの出来事を中心に、自作小説等を載せています。
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Feteアンソロジー小説
 冬木市から食糧が消えた日

「シロウ、最近おかしいとは思いませんか?」
 とある昼下がり、セイバーが唐突にそんなことを口にした。
「おかしいって、なにがさ?」
 お茶を片手に士郎が尋ね返す。テーブルの上には、何故かいつものお茶請けが存在しない。
「あ、そうか。お茶請けが欲しいんだろ、セイバー」
「いえ、それもあるのですが・・・・」
 頬をやや赤く染めてセイバーがうろたえる。そんな姿を微笑ましく眺めながら、士郎は戸棚を開ける。しかし、そこには何も入っていなかった。
「おかしいな。そうか、そういえばここ数日買出しにいってなかったっけ。ごめんなセイバー、後で何か買ってくるよ」
「・・・はやりおかしいとは思いませんか。シロウ、私に何か隠し事をしているのではありませんか?」
 セイバーの言葉に、士郎の顔が若干引きつった。その顔を訝しげに見つめながら、更に追求する。
「ここ数日、どうも料理の量が減っている傾向がみられます。どうなのでしょうかシロウ」
「う・・・・すまないセイバー。あんまり知られたくなかったんだけど・・・・」
 士郎はとても言いづらそうに、理由を告げる。
「な、なんと。ここ数日食料という食料が冬木市から消えている・・・?真ですか!」
「そ、そうなんだ。どうも最近買いだしに行ってもどこの店も閉まっててさ、何も買えないんだ。
 ランサーが魚屋でバイトしてたから理由を聞いてみたんだけど、仕入先から商品が届かないってぼやいてた」
 大所帯を抱える衛宮家の食料減少スピードは凄まじい。藤ねえこと藤村大河を筆頭として、セイバーと桜が原因である。この3人の健啖家を抱えるには、相当な食糧が必要だ。
 2、3日前の事であろうか、ライダーには取られまいと1号自転車を引いて商店街へと買出しに行った。
 しかしそこに存在したのは、どこもかしこもシャッターが下ろされて、閑古鳥が鳴いた商店街であった。
 焦りながらも商店街内を渡り歩き、魚屋からエプロン着用で現れたランサーを見つけ、話を聞いたのだ。
(ああこれか?どうしたもなにも、仕入先から品物が届かねぇんだ。なんでも運送中にトラブったらしくてな、大方他の店も同じだろうさ)
 商売上がったりだ、などと嘆くランサーは、いつもの港へ向った。
「もしや、最近やけにサバが多いのは、ランサーから貰っているからなのですか?」
「そうなんだ。最近じゃ変なのか2匹も居座ってるから、釣りづらいらしいんだけど」
 もちろん、変なのとは何故か子供に大人気の金ピカと、投影で作り上げたバッタモン釣具で波止場を荒らす赤い人だ。
「それは、ランサーには感謝しなければなりませんね・・・」
「そうだな。でもランサーから魚を貰っただけじゃ誤魔化しきれないから、なるべく小出しにしてたんだけ・・・ど・・・・うっ!」
 と、鋭い視線。いや、殺気を感じた士郎はセイバーの方を振り向く。
「ど、どうしたんだセイバー・・・・?」
「シロウ、誤魔化すとはどういう意味なのでしょうか?」
 そこには、朗らかな笑顔を作りながら、悪鬼の如く殺気を放つ少女の姿があった。
 本当の事を言ったら殺される、と一瞬士郎は死を覚悟した。
「いや、それは・・・と、とにかく、そんな訳で今は料理を作るにも材料が無いんだ。悪いけどセイバー、しばらく我慢してもらえないかな」
 なんとか窮地を切り抜けることに成功。だがセイバーは別の事で悩んでいる様子。
「むむむ・・・それは一大事ですね。私は別に構いませんが、タイガはどうするのですか?」
「そうか、藤ねえがまだ残ってた。藤ねえの事だからそう簡単には感づかれないと思うけど、たまに変に鋭いときあるからなぁ」
餓えたトラは何をしでかすか分からない。もし野生の感か何かで食糧がなくなったと分かれば、大暴れするに違いないだろう。
(な、なな、何で夕飯が無いのよーーーーーー!!)
 などとその状況を士郎は想像してしまった。近所迷惑を無視した藤ねえの咆哮が、今にも聞こえてきそうだ。
それに構わないと言ったセイバーも、心の底から不安がっているのが端から見て分かってしまうほど、顔に表情が出ている。
流石にこのまま何の手も打たずに過ごすと、セイバーや桜の落ち込んだ顔を見なくてはならない。それを見るのは忍びない、なんとかしてやりたいとも思うが、自分には何も出来ないと肩を落とす士郎。
「ただいまー。あれ衛宮くん、なに塞ぎ込んでるの?」
 と、自宅の洋館から魔術に使う道具を取りに行っていた凛が、居間に現れた。
「ああ、お帰り。そうだ遠坂、お前最近商店街に商品が届かない理由って、知ってるか?」
「え、そうなの?」
 知らなかった様子である。更にがっくりと肩を落とす士郎。
「ちょっと何よ士郎、そんなに肩落とさなくても良いじゃない。それで、つまり食糧難ってワケ?」
 取りあえずあっさり状況を把握した凛。こういう所は流石だろう。
「そうなんだ、このままだと飢え死にするかもしれない」
「大げさね。って、そうでもないか。なんてったって、大量に食べる人がいるもんね」
 そう言ってニヤーっとセイバーを眺める、「むっ」と口をへの字に曲げるセイバー。
「なにか良い方法無いかな。下手をすると桜まで敵に回しかねない」
 士郎同様、台所に立つことが多い桜も、この異常には気づいている。しかし打開策が無いのか、この件に関してはあまり口を出すことは無かった。
「うーん・・・・なんで商品が届かないか、調べてみたら?」
「そうだな、こうなった原因は必ずあるだろうし。よし、じゃあ行ってくるよ」
 立ち上がり、早速家を出ようとする士郎。そこに、セイバーも立ち上がりついてくる。
「待ってくださいシロウ。我が家の一大事とあれば、じっとしていられません」
「ありがとうセイバー。じゃあ行こうか」
 こうして2人は衛宮邸を後にした。ちなみに凛は乗り気ではないのか、家に残ってお茶を飲んでいる。
「とは言ったものの、どうやって原因を探そうか」
「もう一度ランサーに、詳しい話を聞いてみてはどうでしょうか。もしかしたら何か知っているかもしれません」
「そうだな。じゃあ港に行ってみるか」
 最初の方針も決まり、港へ向う二人。と、前から桜が歩いてきた。今日は衛宮邸で過ごすようだ。
「あ、先輩にセイバーさん。お出かけですか?」
「ちょっとな。ほら、今って食料が買えないだろ?だからその原因を探しに行こうって決まって……どうかしたか桜?」
 士郎の話を聞くと、表情が曇ってしまった桜。何か考え事をしているのか、今では難しい顔をしている。
「桜、体調が優れないのでしょうか。顔色が悪い」
「え?いえ、大丈夫です」
 セイバーも桜の様子に気になったのか、心配そうな顔をしている。しかし桜は何でも無いと言うが、やはり桜の顔色はどう見ても悪い。
「大丈夫ってそんなこと無いだろ、凄い顔が青いぞ。早く帰って休んだ方が良い」
 このまま放っておくのも気が引けるので、士郎は桜を自分の家へ連れて行こうとする。
「大丈夫です、問題ありませんから!それと先輩、今日はこれから用事が出来ましたので夕飯の仕度はよろしくお願いします!」
 突然一気にまくし立てた桜は、失礼しますと最後に言い残してこの場を去っていった。
「どうしたのでしょうか、おかしな桜ですね」
「そうだな、何か心配事でもあったのかもしれないな」
 二人そろって疑問符を頭に浮かべながら、港へと向ったのであった。

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